本坊商店が蔵元へ依頼して造った逸品焼酎

プライベートブランド
本坊商店が蔵元へ依頼して造った逸品焼酎
薩摩酒造(さつましゅぞう)
開聞岳

薩摩酒造(さつましゅぞう)

 薩摩富士と讃えられる開聞岳をシンボルとする南薩摩は、大陸文化の窓口として栄え、奈良時代には遣唐使の発着地にもなった。蒸留技術が海外から伝えられた地でもあり、前田利右衛門がさつま芋を鹿児島に持ち込んだのも此処。薩摩酒造の明治蔵(めいじぐら)は、この焼酎に縁の深い地に佇んでいる。

明治蔵

 白壁と瓦が美しいコントラストを描く建物。明治時代から続く明治蔵のどっしりとした佇まいからは、歴史の風格が漂ってくる。この明治蔵では、高い技術力を誇る黒瀬杜氏の一人・宿里道夫氏によって、南薩摩産の芋だけを原料とした芋焼酎が造り続けられている。

  「絆 赤ラベル」もこの蔵で、かめ壷仕込みで造られている焼酎のひとつ。ふくよかな香りと上品な甘みを持つ芋焼酎「絆」の姉妹品として誕生した。“赤ラベル”の由来は、原材料が紅隼人を代表とする鮮やかなオレンジ色の肉質をもつカロチン系さつま芋であることから名づけられた。

 「絆」に代表されるように、黄金千貫という芋で造られる焼酎が多い中、「絆 赤ラベル」のようにカロチン系さつま芋が原料の芋焼酎は異色の存在。一般的な芋焼酎と飲み比べると、柔らかい香りの中に果実のような個性がかすかに主張することが分かる。口に含むと、優しいうま味と、薄い絹のように舌を包み込むまろやかさにふわりと癒される。

紅隼人

 「カロチン系の芋を使った焼酎が少ないのには、理由があるんです」と教えてくれたのは、明治蔵の部長・松下治氏。カロチン系の芋のひとつである紅隼人は、収量が少なく、収穫もしづらいため、近年手に入りづらくなっている。しかも、でんぷん含有量が少ないため、焼酎造りには普通の芋よりもたくさんの量が必要となるのだそうだ。しかし、そんな難点を乗り越えてでもこの銘柄を造り続けているのは、根強い愛飲家の存在があるからだという。「カロチン系特有の香りがあるでしょう。これが好きな方にはたまらないと言っていただいています」と松下氏。生産農家へ依頼してわざわざ育ててもらい、南薩摩産のカロチン系芋を確保しているそうだ。

 生産農家から届いた芋は、良い焼酎を造るために、細心の注意を払って保管される。「芋はとてもデリケート。温度、湿度、風通しなどには非常に神経を使う。私たちの蔵では、芋の管理係がいて、日に何度も様子を見に行っているんです」と松下氏。「芋姉ちゃんって言われると女性は怒るけど、私たちからすると繊細なお嬢さんって、良い意味だと思いますよ」と笑った。

かいを入れる

 芋の話を伺った後、明治蔵で実際に杜氏の仕事を見せてもらう。古い甕や大きな木製の蒸溜機が置かれる趣のある蔵を、杜氏・宿里道夫氏が説明してくれた。この道50年の熟練の杜氏の冗談を交えた気さくな話ぶりには心が安らぐ。「この甕を見てごらん。昔の手造りだから、形が違うだろう。形が違うと発酵の具合も違うから、ひとつ一つ気をつけていないと」と教えてくれた。

 この日は、一次もろみに蒸した芋を加える作業があるというので、見学させてもらう。小気味良い動きで、蔵子が準備を整え、そこへ芋が運ばれてくる。杜氏の見守る中、蔵子たちが櫂(かい)で一斉に芋を混ぜ始めた。腰を落として無言で櫂を動かす様子は真剣そのもの。カロチン系の芋は、水分が多いため、この作業もねっとりと味噌を練るように重くなり、かなりの重労働になるそうだ。つまり、「絆 赤ラベル」は、希少な原料で造る上に、蔵人の手間がかかった焼酎である、ということだ。

 明治蔵を訪ねた記念に紅隼人をいただいた。早速、帰宅してから円錐形の赤い芋をふかしてみる。あつあつの芋をふたつに割ると、目にも鮮やかなオレンジ色の果肉が現われた。かぶりつくと、人参のような香りとしっかりした甘み、ねっとりとした舌触りが広がっていく。「絆 赤ラベル」の忘れがたい味わいは、まさに、この芋の個性が反映されたものであった。原料を生かしきる杜氏の技に恐れ入ると共に、希少なカロチン系さつま芋の薀蓄を肴に、親しき人と酒を酌み交わしたくなった。個性溢れる一杯は、人と人とを結びつける力を持っている。
”絆“が結ぶ縁は、今夜もまたどこかで深まっていくことだろう。


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